小説 スペースシザース【ss】#12
俺はドタバタと階段を上がって自分の部屋に入った。
一通り髪を乾かし、サッパリした所で、兄貴から貰ったお揃いの古臭い裁縫道具セットを手に取る。
これは初心者から業界の強者までキッチリ仕事が出来る物を詰め合わせてあるセットだ。
一緒にデッサンとかをまとめるファイルも付いてたけど、本棚に閉まったまま使った事は無い。
これのお陰で課題の提出はサクッと出来たし、実習も良い成績を取れて来た。
でも、ハサミは持ち手の部分がヘタって来たし、スケールもバネの戻りが悪い。
やっぱり買い替え時だなー。
でもこのハサミ、片方の持ち手の部分に変な凹みと言うか、エアコンとかのリモコンのリセットボタンの様な穴が有る。
ここをもし押すとしたら、爪楊枝的な先の細い物が必要だ。
今まで気にも止めなかったけど、なんだこれ?
まぁ古臭い物だし、使ってる内に凹んだんだろ。
特に気にせず、新しい物はどんな奴にしようかなーと胸を踊らせていた。